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街道をゆく〈36〉本所深川散歩・神田界隈 (朝日文芸文庫)
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面影なし
本所深川については、司馬遼太郎は「歩かなきゃよかった」とでも思ってたんじゃないかと思う。 確かに江戸落語の吉つぁん八つぁん熊さん、半公に源坊、 本所の叔父さんといったような人情に厚い人びとの故郷だが、 ある時期からは宅地と鉄筋の橋があるばかりのありふれた「東京」である。 住んでいるのも、鳶の頭も深川芸者もむろん江戸っ子ではなく「東京人」。 その辺の苦しさはかなり正直に、ただし陰影を彫るようにして書いているので、 珍しく「苦しい街道をゆく」を読んでみたいという好きな読者に向く。
で、早々と神田界隈に移行。 差し替え企画か何か分からないが、あらかじめ断りでも入れるように、 当時電気街だった秋葉原は秋葉神社くらいに触って切っておき、 神田の学校の密集してる辺りやら何やらの話へと続く。 別に司馬遼太郎が悪いんでも、本所が悪いんでもないのだが、ちょっと寂しい展開。
表紙は聖橋のタモトにあるドーム屋根のニコライ堂だが、 メインストリートに面してるせいか、今や排気ガスですっかり煤っぽくなった訳の分からない建物、 というような感じで、古い結婚式場と言われればそうも見える。 隣には何かの医者か何かが入ったビルが建っている。
味わい深いエッセイです
本所深川、神田という都内を歩きながら、そこにかかわった江戸時代〜明治の人々のことを想いつくまま描き連ねたエッセイです。著者の思索に登場するのは、夏目漱石や森鴎外といった有名人から、岩波書店や古本屋の創業者、そして鳶の頭や芸者さんといった無名人まで様々ですが、何れもが、きりっとした人格を持った人々であり、著者の思索につきあっているだけで、その人々が目の前にいるような錯覚を覚えます。しかし、著者はこれらの人々が好きで好きで仕方がないようで、名作「ひとびとの跫音」にも通じる愛情溢れる筆致でこれらの人々を描いています。 著者の筆致とそれらの人々の素晴らしさで、非常に味わい深いエッセイになっています。司馬ファンには是非読んで欲しい1冊です。
朝日新聞社
本郷界隈―街道をゆく〈37〉 (朝日文芸文庫) 街道をゆく〈33〉奥州白河・会津のみち、赤坂散歩 (朝日文芸文庫) オホーツク街道―街道をゆく〈38〉 (朝日文芸文庫) 街道をゆく〈34〉大徳寺散歩、中津・宇佐のみち (朝日文芸文庫) 街道をゆく (42) (朝日文庫)
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