飛鳥時代に創建され、世界最古の木造建築とされる法隆寺。その修繕・解体の仕事を代々受け継いできた「法隆寺大工」の最後の棟梁となった人物が著者、西岡常一だ。祖父常吉から棟梁としての英才教育を施されてきた西岡は、1934年から20年以上かけて行われた「昭和大修理」において弱冠27歳で棟梁を務め、それ以降も法輪寺三重塔の再建(1967〜1975年)、薬師寺金堂の再建(1971〜1976年)などを手がけた。本書は、その妥協を許さない仕事ぶりで「法隆寺の鬼」とも呼ばれた西岡が、亡くなる3年前に伝統の技と知恵の極意を語り下ろしたものだ。 驚かされるのは「木は生育の方位のままに使え」「堂塔の木組みは寸法で組まず木の癖で組め」といった、法隆寺大工に代々伝わる「口伝(くでん)」を根幹に据えた西岡の語りが、自然や文化、教育論にまで及ぶ点だ。技能のみならず、古き日本人の生き方をも継承してきた者の言葉は、現代人の心に、時を越えて染み入ってくるものばかりだ。 また本書は、西岡のたったひとりの弟子・小川三夫が技能を受け継いだ側の視点から語り下ろす「地」の篇と、小川が興した工人集団「鵤工舎(いかるがこうしゃ)」に集う若者たちへのインタビューを収録した「人」の篇との3部作となっている。1300年間培われてきた技が、現代においていかにして継承されていくかを捉えたドキュメントになっている点も秀逸だ。 なお、西岡が実際に法隆寺を案内しながら、豊富な写真とともにその建築の特徴を語る『木に学べ』や、法隆寺建築の過程を絵解きでわかりやすく解説した『法隆寺 世界最古の木造建築』などの著作もある。(中島正敏)
含蓄があり、行間を読むと見えてくるものがある
「木」がテーマではなく、「人」がテーマです。
だから、「木」を「人」と言い換えれば、そのまま人事論になります。
人を育てて上手く使うにはどうすればよいか?
永遠のテーマですが、その答えが書いてあります。
促成栽培ではなく、ゆっくりじっくり育てていくことで「考える」ことができる「人」に育っていくのでしょう。
人事コンサルタントは必読の一冊です。
お得な再編版が発行されました
「木のいのち木のこころ」は、「天」「地」「人」の3部作として、それぞれ新潮OH!文庫で発行されていましたが、2005年7月に新潮文庫で「木のいのち木のこころ―天・地・人」として1冊にまとめられました。 「木のいのち木のこころ―天・地・人」は、1冊900円なので、ずいぶんお得にこの3部作を読めることになりました。 特にこの「天」については入手困難になっていたので、新版で入手できるようになって嬉しい限りです。
名工が木から学ぶ智の豊穣
昨今の主張としては養老センセイの環境論に類似する、法隆寺の修復に携わった希代の宮大工職人、西岡さんの現場で学んだ木、自然そして、人を育てていく智慧がここに述べられている。 木(自然)は科学ですべてコントロールできる決まりきったものではない。その不確実な自然をどのように建築に生かしていくか。樹齢千年の木は千年、木材として使いきる事ができる。木を選ぶとは育った山を見る事から始まる。 名工は法隆寺の保守に関わってきた古来の大工の技量と時代の精神を、その修復の痕跡から読み取れるという。 近代の工作技術で精度の高い加工が可能になったが、それは宮大工には意味がないと語る何故ならば、加工される木材は生きていて変化するものであるからである。現場の智慧の豊穣さとそこから生まれる人生観に深く感銘を受けた。
現代人の忘れている大切なものに気づかせてくれます
遙か昔の工人達の持っていた、自然や神仏に対する畏敬の念、木への愛情。便利と能率を追い求める現代社会において、私達が忘れていたものです。そう、奈良のお寺を造ったのは、日本史で習ったたった一人の偉い人じゃなくて、名もない、けれど誇りと信心を持った工人達だったのですよね。彼らの名前は歴史に残らないけれど、彼らの仕事は形になって、千年を遙か経てこうして残り、そして、寺の修復を通じて彼らの想いを引き継いできた最後の宮大工の言葉が、こうして私達の胸を打つ。まるで飛鳥の工人が現代によみがえったかのように・・・。この本を読んでから法隆寺や薬師寺を歩くと、まるでお寺の息づかいがきこえてくるような気がします。そして、柱一本一本の中に古(いにしえ)の工人の祈りがこめられているような・・・。
木のこころは人のこころ
素朴な語り口で述べられている内容は厳しくもあり温かくもある。もはや単なる建築論ではなく、教育や環境といった現代の社会にまさに生かされるテーマが提起されており、なるほどとうなずかせる説得力がある。中でも、癖のある木、使いにくい木にもそれなりの良さを認め、その木の一番の良さを発揮できるところに使うという点は殺伐とした現代社会の人間関係において見直されてしかるべきであろう。木の本来持ついのちを最大限生かす。物を大切に使い続けるという点でも大いに賛同できる。
草思社
木のいのち木のこころ〈人〉 木のいのち木のこころ〈地〉 宮大工棟梁・西岡常一 「口伝」の重み 木に学べ―法隆寺・薬師寺の美 (小学館文庫) 不揃いの木を組む
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